美容ジャンルの文章やSNS投稿では、伝えたい気持ちが前に出てしまい、思わぬ「強い表現」や「誤解されやすい言い回し」につながることがあります。
とくに化粧品は読み手の悩みと近い距離にあるため、言葉の“温度感”が印象を左右します。
この記事では、読者に安心して読み進めてもらうために気をつけたい表現や、やわらかく伝えるコツをまとめました。
美容ライターやSNS運用担当の方の、毎日の文章づくりに役立てていただけたらうれしいです。
1. 化粧品ライティングで炎上する理由|どんな言い回しが問題になるのか?
炎上は、強い言葉そのものだけでなく、「誤解」や「意図が伝わらない状態」から起きることがあります。
とくに化粧品は個人の体感差が大きい分、言葉の受け取り方にも違いが出てきます。そのため「誤解」や「意図が伝わらない状態」を招きやすく、不信や反発、そして炎上へとつながってしまうのです。
(1) 美容は読者が不安を抱きやすいテーマ
肌や年齢、見た目に関する話題は、読者の個人的な悩み・コンプレックスに直結しやすいテーマです。
少し強い言い方をしただけでも「煽られている」と感じる人がおり、意図せず強く響いてしまいます。
例えば「老け」「シミ」「シワ」「毛穴」という悩みに関する単語だけでは、そこまで強い印象を与えませんが、「おばさん」「モテない」「馬鹿にされる」といったネガティブワードが合わさると、炎上の火種になります。
(2) SNSでは“文脈が切り取られる”
SNSでは、文章全体ではなく一部分だけが目に触れるケースも少なくありません。
一部の表現だけが拡散される場合があるため、強めの言葉が誤解や炎上を招くことがあります。
(3) 断定・根拠不足・PR感は“不信”につながりやすい
文章がていねいでも、次のような表現は不信を招きます。
- 「必ず肌が若返ります」といった断定的な言い方をする
- 引用元・根拠を提示しない
- 案件商品をごり押しでPR感が丸出し
こうした表現は炎上につながる可能性があるので、注意が必要です。
2. 炎上しないために、どんな表現を避けるべきか?
ここからは、実際のライティングで使いがちな注意したい表現を整理します。
読み手に不安を与えやすい・誤解しやすい・刺激が強い、という観点からまとめています。
とくにSNSでは一部だけが引用されることもあるため、「単独で読まれても誤解が少ないか」を意識していきましょう。
(1) 悩みを必要以上に刺激する言葉
悩みに共感しようとするあまり、言葉が強くなってしまうケースは少なくありません。
読者の不安をあおらないバランスが大切です。
悩みを強く指摘するよりも、「気になるときがありますよね」と寄り添う方向が◎。
NG例
・「放置すると取り返しがつきません」
・「深刻な毛穴」
言い換え例
「乾燥で毛穴の影が気になるときがありますよね。そんなときにおすすめなのが保湿美容液です。」
(2) 読者を否定するように感じられる言い方
アドバイスのつもりでも、言い回し次第では否定と受け取られることがあります。
「正しさ」よりも「受け取りやすさ」を意識して、読者の現在の価値観や生活リズムを尊重した言い回しに整えます。
NG例
・「ケアを怠る人ほど老けます」
・「あなたの洗顔は間違っています」
言い換え例
「洗顔方法によって、日中の肌のうるおいに違いが出る場合があります。」
(3) “急かし系”コピー
行動を促す表現は便利ですが、急かす印象が強いと反発を生みやすくなります。
読者の判断に委ねる余白を残すことがポイントです。
NG例
・「知らないと損」
・「今すぐやらないと後悔します」
言い換え例
「知っておくと、自分に合う選択肢が見つけやすくなります。」
(4) 数字の強調が期待を高めすぎる場合
数字は説得力がある反面、期待値を過度に引き上げてしまうこともあります。
使う場面と表現のトーンに注意が必要です。
数字を用いる場合は、データの根拠をきちんと提示することが肝心です。
NG例
・「利用者のほぼ100%が実感」
・「1日で変わる」
言い換え例
「使用感に満足した人は全体の80%以上でした。(調査概要:2025年1月1日~1月10日、男女100名、調査会社〇〇、~~)」
(5) 写真・体験談の“過度なストーリー”
写真や体験談は伝わりやすい反面、印象操作になりやすい要素でもあります。
とくに、加工の強い写真・ドラマチックすぎる体験談は、強いイメージ誘導につながることがあります。
写真の場合は、ビフォーアフターを同じような条件下(場所・光・加工の有無など)で撮影して、変化を正確に比較する。
体験談は、デメリットについても言及したり、あくまで「自分の場合はこうだった」と付け加えたりするように意識しましょう。
NG例
・「皆さんも私と同じように変わります」
・同じ条件下で撮影しないビフォーアフター画像↓

言い換え例
「私の肌には合っていましたが、敏感肌さんには刺激が強すぎることもあるので注意が必要です」
(6) 主観が強すぎる比較表現
比較は分かりやすさにつながる一方、表現次第で誤解を招きやすい要素です。
主観と客観の線引きを意識して、「ナンバーワン」「最強」など実物以上に良さを強調することは避けましょう。
NG例
・「これが一番」
・「他社より優れている」
言い換え例
「しっとり感を重視したい方におすすめしたい化粧水です。」
3. SNS・ブログ・PRで気をつけたいポイント
媒体によって、文章の届き方や誤解されやすさは変わります。
それぞれの特性を踏まえて意識したい点を整理します。
(1) SNS(Instagram/X/TikTok)
拡散力が高い分、短い言葉ほど慎重さが求められます。
SNSでは「文脈が切り取られやすい」「インパクト重視のコピーが誤解に繋がりやすい」といった特徴があります。
そして拡散力が高い分、短い言葉ほど慎重さが求められます。
気をつけるポイントとして、
- 写真加工はトーンを整えて自然に見せる
- 投稿文だけ見ても意図が伝わるよう、「前提(誰向け/どんなとき)」を一言添える
といった対策をとると安心ですよ。
(2) ブログ
情報量が多いからこそ、強い表現が残り続けてしまう点に注意します。
記事の最後に「参考文献・引用ソース」をURL付きで記載して、根拠を示すことも大事です。
比較やランキングで、商品サービスを紹介する場合は「何を基準に選んだか」を記載し、公平性を意識した書き方をするとよいでしょう。
(3) PR記事・プレスリリース
伝える役割と、推しすぎない配慮のバランスが重要になります。
ブランドが伝えたい情報を厳選して伝え、体験談は良いところをピックアップしすぎず、読者の受け取りやすさの両立を目指すことが大切です。
あわせて、PRであることが分かるようにプロモーション表記は忘れないようにしましょう。
4. まとめ:読み手に寄り添う表現が、信頼につながる
化粧品の記事は、言い回しひとつで読者の受け取り方が変わります。
強調を避け、読み手のペースに寄り添うことで、安心して読める文章につながります。
案件記事やSNSでも共通して、
“煽らず、ていねいに伝える” ことを大切にすると、結果的に長く読まれる記事になります。
参考文献
- Google 検索セントラル「Helpful Content(良質なコンテンツとは)」
https://developers.google.com/search/docs/fundamentals/creating-helpful-content?hl=ja - Google 検索セントラル「SEOスターターガイド」
https://developers.google.com/search/docs/fundamentals/seo-starter-guide?hl=ja - Google 検索セントラル「検索品質評価ガイドライン」
https://developers.google.com/search?hl=ja - 一般社団法人 日本パブリックリレーションズ協会
https://prsj.or.jp/ - 日本広報協会
https://www.koho.or.jp/ - 総務省「情報発信に関するガイドライン」
https://www.soumu.go.jp/ - NHK放送文化研究所「文章表現に関する研究」
https://www.nhk.or.jp/bunken/ - 『新しい文章力の教室(インプレス)』
NDL書誌:https://ndlsearch.ndl.go.jp/ - 『沈黙のWebライティング』
NDL書誌:https://ndlsearch.ndl.go.jp/ - 『沈黙のWEBマーケティング』
NDL書誌:https://ndlsearch.ndl.go.jp/ - 『書く技術・伝える技術』
NDL書誌:https://ndlsearch.ndl.go.jp/ - 『人を動かす文章術』
NDL書誌:https://ndlsearch.ndl.go.jp/ - 日本編集制作協会「編集・校正の基礎資料」
https://www.ajec.or.jp/ - 日本新聞協会「記事の書き方・表記ガイド」
https://www.pressnet.or.jp/ - 共同通信社「記者ハンドブック」
(NDL書誌)https://ndlsearch.ndl.go.jp/ - 文化庁「国語に関する調査」
https://www.bunka.go.jp/ - 海外記事スタイルガイド(AP Stylebook)
https://www.apstylebook.com/ - 研究論文検索:Google Scholar
https://scholar.google.com/ - クリエイティブ・コモンズ(引用・著作権基礎)
https://creativecommons.org/ - 編集工学研究所「文章構造と編集思考に関する資料」
https://www.eilab.org/
美容ライター&コンテンツディレクター。スキンケア・コスメ・美容医療のメディア運営や記事制作を中心に活動中。
日本化粧品検定1級(コスメコンシェルジュ)/化粧品成分検定1級(化粧品成分上級スペシャリスト)

